金額の決め方そのものが開示される ― AMDが最高経営責任者に目標7,500万ドルの業績連動報酬を設定(2026年2月)
米AMDは2026年2月、役員5名の2025年度賞与を承認するとともに、リサ・スー氏に目標価値7,500万ドルの特別株式報酬を設定しました。全額が業績連動で、4つの株価ハードルによって0%から200%の範囲で獲得数が決まります。
提出書類の基本情報
- 企業ADVANCED MICRO DEVICES INC(AMD)
- 書類臨時報告 8-K
- 市場Nasdaq
- 業種(SIC)Semiconductors & Related Devices
- 提出日2026-02-17
- 対象期2026-02-10
- 8-K事象5.02 取締役・執行役員の異動/報酬
- 受付番号0000002488-26-000029
要点
- 2026年2月10日に委員会が役員4名の2025年度賞与を、翌11日に取締役会がリサ・T・スー氏の3,125,430ドルを承認しました。
- 同じ2月11日、取締役会はスー氏に対する目標価値7,500万ドルの特別長期株式インセンティブを承認しました。
- 目標の業績連動型譲渡制限付株式ユニット数は、目標価値を付与日までの30取引日の平均終値で除して算定されます。
- 獲得できる割合は4つの株価ハードルに応じて0%から200%で、業績期間は2026年3月15日の付与日から2031年3月15日までです。
- 委員会は史上最高値267.08ドルとS&P500等の直近5年の成長率を検討し、両群の50パーセンタイルを十分に上回る水準にハードルを設定したとしています。
1賞与の額と、報酬の設計は別のもの
この報告には二つの内容が入っています。一つは、役員5名に対する2025年度の賞与額です。もう一つは、最高経営責任者に対する特別な株式報酬の設計そのものです。前者は決まった金額の開示ですが、後者は「どうなったらいくら払うか」という規則の開示にあたります。金額ではなく、金額の決まり方が開示の対象になるという点が、項目5.02の中でも際立った例です。
2何段まで上がったら、何%を得るか
| 獲得できる割合 | 株価ハードル(5年複利年成長率、または価格) | 区分 |
|---|---|---|
| 0% | 10%未満 | 下限に届かない場合 |
| 50% | 10% | トランシェ1 |
| 100% | 15% | トランシェ2 |
| 150% | 17.5% | トランシェ3 |
| 200% | 600ドル | トランシェ4 |
報告書によれば、これらのハードルはいずれも、付与日までの60取引日の平均終値(基準価格)を大幅に上回る水準に置かれています。各トランシェは、業績期間中に90取引日の平均終値がハードル以上になった場合にのみ確定します。
パーセンテージで示されたハードルは、基準価格から5年複利年成長率が当該割合となる価格までの上昇を前提に算定され、トランシェ1から3の最終的なハードル価格は付与日に算定して5.00ドル単位に丸められます。
3水準をどう決めたかまで書く
委員会は、付与日時点の同社株の史上最高値である267.08ドルに加えて、S&P500およびその情報技術構成銘柄について直近5年の株価の複利年成長率を検討し、両群で観察された直近5年の成長率の50パーセンタイルを十分に上回る水準に目標のハードル価格を設定したと記載されています。つまり、水準の高さを主張するだけでなく、何と比べて高いのかまで書かれています。
加えて、3周年以前にハードルを達成して獲得したPRSUであっても3周年までは確定せず、その50%が3周年に、残りの50%が5周年に確定する仕組みが置かれています。
4八つの型を並べ直す
| 型 | どんな出来事か | この連載で取り上げた例 |
|---|---|---|
| 最高経営責任者の交代 | 次の指揮者を決める | アップル(2026年4月) |
| 報酬の後追い報告 | 先に人事、後から金額 | アクセンチュア(2025年7月・8-K/A) |
| 社外からの登用 | 外から役員を採り、条件を金額で示す | ブロードコム(2026年3月) |
| 社内からの昇格 | 中の人を引き上げ、既存文書を参照する | ゼネラル・ダイナミクス(2025年12月) |
| 暫定から本任へ | 仮の体制を確定させる | デル・テクノロジーズ(2025年11月・8-K/A) |
| 取締役の退任 | 任期の途中で退き、意見の相違でないと記す | オラクル(2026年1月) |
| 退職時の給付の取決め | 辞めるときの条件を決め、失効日も定める | アドビ(2026年7月) |
| 業績連動報酬の設計 | 金額ではなく決め方を開示する | AMD(2026年2月) |
八つを並べると、項目5.02が覆う範囲の広さが見えます。 人が来る、人が去る、仮が本になる、そして誰も動かないまま条件だけが決まる。共通しているのは、いずれも「その会社を誰がどんな条件で動かすのか」に関わる事実だという点です。2026年9月4日時点で当サイトが保持する446件の臨時報告書のうち116件(26.0%)がこの項目を含んでおり、四つに一つを超えます。開示の全文は米証券取引委員会に提出された文書でご確認ください。
なぜ重要か
項目5.02の開示対象は、確定した金額だけではない。何がどこまで達成されたらいくら払うのかという設計そのものが開示され、しかもその水準を何と比較して決めたかまで書かれる。人が来る、人が去る、仮が本になる、誰も動かないまま条件が決まる。八つの型に共通するのは、その会社を誰がどんな条件で動かすのかに関わる事実だという点である。
よくある質問(FAQ)
獲得できる株数はどう決まりますか?
株価ハードルはどのように判定されますか?
ハードルの水準はどう決められましたか?
出典(一次情報)
本記事は下記の米国SEC公式開示に基づく独自整理です。正確・最新の内容は必ず原文をご確認ください。
- SEC EDGAR(提出書類インデックス)
- 主要書類(原文)
- 受付番号:0000002488-26-000029