FinCEN、Banque MisrのUAE5支店を「主要な資金洗浄の懸念先」と認定する提案 ― 米金融機関にコルレス口座の開設・維持を禁じる特別措置、意見受付は2026年10月1日まで ― 連邦官報(2026年9月)
財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が、米国愛国者法311条に基づき、Banque Misrのアラブ首長国連邦にある5支店を「主要な資金洗浄の懸念先」と認定し、米国の金融機関にコルレス口座の開設・維持を禁じる特別措置を課すことを提案する規則案を公示した。意見の受付は2026年10月1日まで。
文書の概要(一次情報)
- 文書種別提案規則
- 発行機関財務省
- 引用91 FR 56085
要点
- FinCENが米国愛国者法311条に基づき、Banque MisrのUAEにある5支店を主要な資金洗浄の懸念先と認定する規則案を公示(2026年9月1日)。
- 提案される特別措置は、コルレス口座の開設・維持の禁止、外国銀行経由の取引を処理しない合理的措置、外国コルレス口座への特別なデューデリジェンスの3つ。
- 規則案は同支店の資産規模を約60億ドル、米国の金融システムへの直接のコルレス関係を3件と記載している。
- FinCENは2024年以降に少なくとも18億ドルのイラン系シャドーバンキングの可能性がある活動を特定したとし、業務の一部は正当と想定しつつリスクが上回ると評価している。
- 提案の段階であり確定した認定ではない。意見の提出期限は2026年10月1日、整理番号FINCEN-2026-0232。
1口座を閉じるという制裁の形
金融規制の世界で最も効き目が強い手段の一つは、資産を凍結することではなく、米ドル決済への通路を塞ぐことである。米国愛国者法311条は、財務長官が国外の金融機関等を「主要な資金洗浄の懸念先」と認定したうえで、5種類の特別措置のいずれかを課す権限を定めている。
今回FinCENが提案したのは、そのうち最も重い部類にあたる、コルレス口座(外国銀行が米国の銀行に持つ決済用の口座)の開設・維持そのものを禁じる措置だ。認定の対象は、エジプトの銀行Banque Misrのアラブ首長国連邦にある5支店である。
2提案されている3つの措置
- 1直接の遮断米国の金融機関が、Banque Misr UAEのために、またはその代理としてコルレス口座を開設・維持することを禁じる
- 2間接の遮断外国銀行の米国内コルレス口座を通じた取引がBanque Misr UAEに関わる場合、その取引を処理しないよう合理的な措置をとることを求める
- 3監視の義務外国コルレス口座がBanque Misr UAEに関わる取引の処理に使われないよう、合理的に設計された特別なデューデリジェンスを適用することを求める
三つが重ねられているのは、直接の口座を閉じるだけでは迂回されうるからだ。二段目は他の外国銀行を経由する取引を、三段目はそれを見つけるための継続的な確認を求めている。米国の金融システムに直接つながる口座だけでなく、その先の連鎖まで視野に入れた設計になっている。
3規則案が示している事実関係
規則案によれば、Banque Misr UAEの資産規模は約60億ドルで、米国の金融システムへ接続する直接のコルレス関係を3件持つ。FinCENはBanque Misr UAEの正当な業務の全体像を把握しているわけではないとしたうえで、業務の一部は正当なものと想定すると明記している。
そのうえで、2024年以降に少なくとも18億ドルのイラン系シャドーバンキングの可能性がある活動を特定したとし、正当な活動があるとしてもそれが同支店のイラン系シャドーバンキング促進によるリスクを上回るものではないと評価している。これは提案の段階であり、確定した認定ではない。
4提案規則という段階
この文書は「規則案(Notice of Proposed Rulemaking)」として公示されており、意見の提出期限は2026年10月1日、整理番号はFINCEN-2026-0232である。2026年9月2日時点で当サイトが保持する連邦官報6,830件のうち、提案規則は460件で、規則920件・告示5,384件と比べて少ない。
提案規則の段階では内容が確定しておらず、寄せられた意見を踏まえて修正されうる。ただし311条の措置に関しては、提案の公示それ自体が市場に対する明確な信号として働くという性質もある。
なぜ重要か
311条の特別措置は、資産凍結ではなく米ドル決済への接続を断つ形で効く手段であり、対象金融機関と取引のある企業・銀行に広く影響が及びうる。提案の公示は最終決定ではないが、コルレス関係の見直しやデューデリジェンス体制の点検を促す実務上の起点になる。
よくある質問(FAQ)
コルレス口座とは何ですか?
これは確定した措置ですか?
出典(一次情報)
出典:Federal Register(連邦政府文書=パブリックドメイン)。リンク先は公式サイトです。