60の経済圏を一度に調査し、強制労働の禁止を理由に関税を課す ― 日本には合計12.5%になるよう上乗せ(2026年7月)
米大統領が、通商法301条に基づく調査を経て、強制労働で作られた物品の輸入禁止を実施していないと認定された経済圏に関税を課すよう米通商代表に指示する覚書を発した。日本については、最恵国税率との合計が12.5%になるよう上乗せするとされている。
文書の概要(一次情報)
- 文書種別大統領文書
- 発行機関大統領府
- 引用91 FR 47717
要点
- 米大統領が、通商法301条の調査を経て、対象となる経済圏に関税を課すよう米通商代表に指示する覚書を発した。
- 調査は60の経済圏を対象とし、強制労働で生産された物品の輸入禁止を定め実効的に執行しているかを検討した。
- 17の経済圏の物品には10パーセント、その他の調査対象には12.5パーセントの税率が指示されている。
- 日本・韓国・スイスについては、最恵国税率との合計が12.5パーセントになるよう上乗せし、既に12.5パーセント以上なら課さない。
- 原材料など附属書に掲げる産品は関税の対象から除外される。
1何が調査されたのか
通商法第301条は、外国の行為・政策・慣行が不合理または差別的であり、米国の通商に負担を課しまたは制限している場合に、米通商代表が措置をとることを認める規定です。本件の調査は、強制労働によって生産された物品の輸入禁止を、各経済圏が定めているか、また実効的に執行しているかを対象としました。
- 12026年3月12日通商代表が60の経済圏について第301条に基づく調査を開始
- 2検討事項強制労働で作られた物品の輸入禁止を定めているか、実効的に執行しているか
- 32026年6月2日通商代表が、各経済圏の行為等が不合理で米国の通商に負担を課すと決定
- 4本覚書大統領が、通商代表に対して関税の賦課を指示する
自国が強制労働の物品を輸入しないだけでなく、相手国にも同じ禁止を求め、実施していなければ関税で対応するという構成です。一度に60の経済圏を対象とする点も、この調査の特徴といえます。
2税率の決め方
| 対象 | 税率の定め方 |
|---|---|
| 17の経済圏(アルゼンチン、カナダ、インド、メキシコ、英国など) | 10パーセント |
| 欧州連合・台湾 | 最恵国税率との合計が10パーセントになるよう上乗せ。既に10パーセント以上なら課さない |
| 日本・韓国・スイス | 最恵国税率との合計が12.5パーセントになるよう上乗せ。既に12.5パーセント以上なら課さない |
| その他の調査対象 | 12.5パーセント |
日本を含む一部については、単純に一定率を上乗せするのではなく、既存の税率との合計が一定の水準になるよう調整する方式がとられています。もともとの関税が高い品目には上乗せが行われず、低い品目ほど上乗せが大きくなる仕組みです。覚書は、このように合計を上限で抑えることが、互恵的な通商に関する取決めの条件と整合し、強制労働の輸入禁止に関する約束の履行を促すうえで適切だと述べています。
3除外される産品
覚書は、附属書に掲げる産品を関税の対象から除外するとしています。理由として挙げられているのは、それらが原材料であり、関税の対象とすれば不利益をもたらしうることなどです。関税を課す目的が相手国の制度の是正にある以上、自国の生産に必要な投入財まで対象にすると目的と手段が食い違う、という考え方が読み取れます。
4覚書という形式
覚書は大統領文書の種別の一つで、2026年9月2日時点で当サイトが保持する記録では2件と少数です。いずれも第301条に関するもので、通商代表という特定の機関に宛てて指示を与える形をとります。布告が一般に向けて宣言する形式であるのに対し、覚書は名宛人に対する指示であるという違いがあります。
なぜ重要か
関税が品目別ではなく「既存税率との合計」で定められるため、影響は品目ごとに大きく異なる。もともとの税率が低い品目ほど上乗せが大きくなる点は、輸出入の実務で確認が必要になる。
よくある質問(FAQ)
通商法301条とは何ですか?
なぜ合計の税率で定めるのですか?
出典(一次情報)
出典:Federal Register(連邦政府文書=パブリックドメイン)。リンク先は公式サイトです。