電力網への大規模サイバー攻撃を模擬する試験場を作る法案 ― 国立研究所と大学に2026〜2030年度の助成
H.R.7696「2026年AIサイバー電力網保護・強靭性開発法案」は、国立研究所と高等教育機関に対し、電力網の規模でのサイバー攻撃を模擬する安全な人工知能サイバー・フィジカル試験場を開発するための助成を行う制度を設ける法案。国土安全保障省のCISA長官と長官が共同で、2026年度から2030年度までの各年度について実施する。
法案の概要(一次情報)
- 法案番号H.R. 7696
- 種別下院法案
- 議会第119議会
- 最新の議会アクションReferred to the Subcommittee on Cybersecurity and Infrastructure Protection.(2026-02-26)
要点
1本物の電力網では試せない
サイバー攻撃への備えを確かめるには、攻撃を受けてみるのが最も確実です。しかし電力網でそれを行うことはできません。実際に停電すれば被害が出ますし、そもそも試験のために系統を止めることは許されません。この法案が助成の対象とする「サイバー・フィジカル試験場」は、その制約を回避するための仕組みです。物理的な設備と計算機の模擬を組み合わせ、本物を止めずに攻撃と防御を試せる場を作ります。
2制度の骨格
- 1設立の期限法律の制定日から180日を超えない期間内
- 2実施主体CISAの長官と国土安全保障長官が共同で設ける
- 3対象年度2026会計年度から2030会計年度までの各年度
- 4助成の相手国立研究所および高等教育機関
- 5目的電力網の規模でのサイバー攻撃を模擬し、訓練を行うための安全なAIサイバー・フィジカル試験場の開発
助成の相手を国立研究所と高等教育機関に限っていることが、この制度の性格を示します。攻撃の模擬という性質上、実施の場は管理されている必要があり、また成果は特定企業のものではなく公共の知見として蓄積されるべきだという判断と読めます。5年度分をまとめて定めていることも、試験場のような設備が単年度では作れないことの反映です。
3電力網をめぐる政策の重なり
電力の基幹系統をめぐっては、当サイトでも大統領令14421を扱っています。そちらは外国製の機器の調達に国家緊急事態の枠組みで介入するもので、供給網の側からの対処にあたります。本法案は、攻撃を受けたときにどう持ちこたえるかを試す場を作るという、備えの側からの対処です。同じ対象に対して、供給網の管理と、攻撃への耐性の検証という二つの角度から政策が組まれていることが分かります。
4小委員会という段階
最新の状況は、サイバーセキュリティ・インフラ保護小委員会への付託です。委員会に付託された法案が、さらに専門の小委員会へ回されることは通常の手続ですが、そこから本委員会へ戻って報告が決定されるまでには距離があります。2026年9月2日時点で当サイトが保持する法案120件のうち94件(78%)は委員会に付託されたままで、本法案もその段階にあります。
なぜ重要か
電力事業者や制御機器の供給者にとって、公的な試験場が整備されるかどうかは自社で検証環境を持つ負担を左右する。供給網の管理と攻撃耐性の検証という二方向から政策が組まれている構図も押さえておく価値がある。
よくある質問(FAQ)
なぜ試験場が必要なのですか?
なぜ助成の相手を限るのですか?
出典(一次情報)
出典:Congress.gov(米国議会図書館・連邦立法資料=パブリックドメイン)。リンク先は公式サイトです。
- Congress.gov(法案ページ・原文)
- H.R. 7696(第119議会)