「本物と見分けがつかない」を基準にデジタルなりすましを刑事罰の対象にする法案 ― 架空の人物を作った場合も含める
S.3982「2026年AI詐欺責任法案」は、1934年通信法第223条を改正し、州際または対外の通信においてデジタルなりすましを用いて詐欺を行うことを刑事的に禁じる法案。「デジタルなりすまし」を、合理的な人が全体として見聞きしたときに本物と見分けがつかない描写と定義する。
法案の概要(一次情報)
- 法案番号S. 3982
- 種別上院法案
- 議会第119議会
- 最新の議会アクションRead twice and referred to the Committee on Commerce, Science, and Transportation.(2026-03-04)
要点
- S.3982は、1934年通信法第223条を改正し、デジタルなりすましを用いた詐欺を刑事的に禁じる法案。
- 判定の基準は、合理的な人が全体として見聞きしたときに本物と見分けがつかないかどうか=作り方ではなく受け取られ方で線を引く。
- 実在する個人のなりすましだけでなく、実在の人物と見分けがつかない架空の個人の描写も対象に含む。
- 「識別可能な個人」の定義は、顔・容姿・声に加えて固有のあざその他の見分けのつく特徴にも及ぶ。
- 新法ではなく、通信を手段とする犯罪を扱ってきた既存の枠組みに接続する形を取る。
1判断の基準を「見分けがつくか」に置く
生成された映像や音声をどこから規制するかは、技術の水準に左右されます。品質が上がり続ける以上、技術の仕様で線を引けば、すぐに古くなります。この法案が採ったのは、合理的な人が全体として見聞きしたときに本物と見分けがつかないかどうか、という基準です。作り方ではなく、受け取った人にどう見えるかで判定します。
2二つの類型
二つ目の類型が置かれていることが、この定義の周到さを示します。実在しない人物を作り出した場合、なりすまされた被害者は存在しません。それでも、実在の人物の描写と見分けがつかないなら、受け取る側は本物の人間だと信じます。詐欺の手口としては同じ効果を持つため、被害者の特定を要件にしない類型が用意されています。
3「識別可能な個人」の定義
条文は、顔・容姿・声に加えて「固有のあざその他の見分けのつく特徴」まで挙げています。顔が映っていなくても、声が使われていなくても、その人だと分かる特徴が用いられていれば該当しうるという書き方です。技術が部分的な再現に向かっても対応できるようにした定義といえます。
4通信法を改正するという選び方
改正の対象は1934年通信法第223条です。同条は、通信を用いた嫌がらせや脅迫を扱ってきた条文で、そこにデジタルなりすましによる詐欺を加える形になります。新しい法律を作るのではなく、通信を手段とする犯罪を扱ってきた既存の枠組みに接続するという選択です。
当サイトが扱う法案には、選挙運動法の詐称禁止にAI生成物を明記するものもあり、既存の禁止規定へAIを書き込む型が繰り返し現れます。2026年9月2日時点で当サイトが保持する法案120件のうち94件(78%)は委員会に付託されたままです。
なぜ重要か
生成物を扱う事業では、実在の人物の再現だけでなく「実在すると信じさせる架空の人物」も規制の射程に入りうる。受け取られ方で判定する基準は、技術の進歩に左右されない代わりに、事前の適法性判断を難しくする面もある。
よくある質問(FAQ)
なぜ技術の仕様で線を引かないのですか?
なぜ架空の人物も対象なのですか?
出典(一次情報)
出典:Congress.gov(米国議会図書館・連邦立法資料=パブリックドメイン)。リンク先は公式サイトです。
- Congress.gov(法案ページ・原文)
- S. 3982(第119議会)