AI広告開示法案(H.R.10146)― 開示の対象がシステムプロンプトや学習データにまで及び、「AIであることを否定させない」と定める
AIツールの回答が商業的な取り決めに基づいて商品・サービス・事業者に触れる場合に、その開示を義務づける法案。利用者が商品の推薦を求めていない場合も対象とし、システムプロンプトや検索拡張生成の情報源、微調整データが第三者から提供・出資されている場合も開示対象に含めている。
法案の概要(一次情報)
- 法案番号H.R. 10146
- 種別下院法案
- 議会第119議会
- 最新の議会アクションReferred to the House Committee on Energy and Commerce.(2026-08-24)
要点
- AIツールの回答が商業的な取り決めに基づいて商品・サービス・事業者に触れる場合の開示を義務づける法案。
- システムプロンプト、検索拡張生成の情報源、微調整データが第三者から提供・出資されている場合も開示対象に含まれる。
- ブランド固有の言及や順位づけに加え、省略も影響のかたちとして挙げられている。利用者が推薦を求めていない場合も対象。
- 開示はスクロールなしに見える位置・平易な言葉で行い、会話の保存・書き出し・共有後も保持され、音声では目立ちにくくする音響効果を用いてはならない。
- 直接尋ねられたときにAIであることや商業関係を否定するようAIシステムに指示することを禁じている。
- 開示の対象は目に見える宣伝から、言及しないこと、さらにシステムプロンプトや学習データにまで広がる。
1開示の対象が「回答」から「仕込み」へ広がっている
広告の表示義務というと、目に見える宣伝に印を付ける話になりやすい。この法案が踏み込んでいるのは、利用者からは見えない側である。システムプロンプト、検索拡張生成の情報源、微調整に使ったデータ。これらが第三者から提供または出資されている場合も開示の対象に含めている。
回答の見た目に広告らしさがなくても、その回答を作る材料に商業的な取り決めが混ざっていれば開示せよ、という立て方になっている。
2言及しないことも対象に含めている
もう一つ特徴的なのは、ブランド固有の言及や順位づけと並んで、省略が挙げられている点である。ある商品に触れることだけでなく、触れないことも影響のかたちとして扱われている。助言や手順の説明として書かれた回答は、利用者が商品の問い合わせだと認識していないぶん、影響を受けても気づきにくい。
利用者が推薦を求めていない場合も対象とすると明記しているのは、この気づきにくさに対応するためと読める。
3「否定するよう指示してはならない」という禁止
禁止行為として、直接尋ねられたときにAIであることや商業関係にあることを否定するようAIシステムに指示することが挙げられている。これはモデルの振る舞いではなく、指示を与える側の行為を禁じる書き方である。
開示の形式についても、スクロールなしに見えること、会話を保存・書き出し・共有しても保持されること、音声では音量やピッチで目立たなくしないことまで定めており、抜け道を条文の水準で塞ごうとしている。2026年8月31日時点で当サイトが保持するAI関連法案114件のうち、この法案は委員会付託の段階にあり、8割を占める同じ段階の一つにあたる。
4開示の対象がどこまで広がるか
広告の表示義務というと、目に見える宣伝に印を付ける話になりがちです。この法案は、そこから利用者に見えない側へ段階的に踏み込んでいます。
- 1目に見える宣伝広告らしい見た目のものに印を付ける
- 2回答の内容ブランド固有の言及や順位づけを対象に含める
- 3言及しないこと省略も影響のかたちとして扱う。触れないことも対象になる
- 4回答を作る材料システムプロンプト、検索拡張生成の情報源、微調整に使ったデータまで含める
これらが第三者から提供または出資されている場合も開示の対象に含めています。回答の見た目に広告らしさがなくても、その回答を作る材料に商業的な取り決めが混ざっていれば開示せよ、という立て方です。開示の形式についても、スクロールなしに見えること、会話を保存・書き出し・共有しても保持されること、音声では音量やピッチで目立たなくしないことまで定めています。
なぜ重要か
検索広告では、広告枠と自然な結果が場所で分かれていた。対話型の回答ではその境目が無く、影響は言及・順位・省略として溶け込む。開示の対象をシステムプロンプトや学習データにまで広げる立て方は、AIを使った推薦や助言を提供する側にとって、何を開示可能な形で管理しておく必要があるかという問いになる。
よくある質問(FAQ)
見た目が広告でなくても対象ですか?
なぜシステムプロンプトまで開示対象なのですか?
「省略」も規制されるのですか?
出典(一次情報)
出典:Congress.gov(米国議会図書館・連邦立法資料=パブリックドメイン)。リンク先は公式サイトです。
- Congress.gov(法案ページ・原文)
- H.R. 10146(第119議会)