想定外に適応するAIの「科学」を探るSAIL-ON ― RTX BBN Technologiesへの連邦契約(USAspending)
訓練時に想定しない新規事態(オープンワールドの新規性)にも適応できるAIシステムの基礎研究プログラム「SAIL-ON」の一環として、国防総省(DoD)が RTX BBN Technologies, Inc. に発注した連邦契約。
契約の基本情報
- 受注者RTX BBN TECHNOLOGIES, INC.
- 契約額$5,202,312(約520.2万ドル)
- 発注機関Department of Defense
- 発注部局Defense Contract Management Agency
- 契約種別DEFINITIVE CONTRACT
- 履行期間2019-11-20 〜 2022-06-30
- 契約番号(PIID)HR001120C0022
契約の概要(原文)
THE SCIENCE OF ARTIFICIAL INTELLIGENCE AND LEARNING FOR OPEN-WORLD NOVELTY (SAIL-ON) PROGRAM INTENDS TO RESEARCH AND DEVELOP THE UNDERLYING SCIENTIFIC PRINCIPLES, GENERAL ENGINEERING TECHNIQUES, AND ALGORITHMS NEEDED TO CREATE AI SYSTEMS.
要点
- SAIL-ON=想定外の「新規事態」にも適応できるAIの基礎原理・工学手法・アルゴリズムを研究開発
- 「オープンワールドの新規性」=AIが訓練時に学んでいない予期せぬ状況・ルール変化のこと
- 製品調達ではなく、AIの土台となる「科学」を国費で育てる基礎研究型の契約
- 受注は RTX BBN Technologies, Inc./契約種別は確定契約(definitive contract)
- 自動運転から防衛まで、AIの頑健性・信頼性を左右する根本課題に対応
SAIL-ON(Science of Artificial Intelligence and Learning for Open-World Novelty=オープンワールドの新規性に対する人工知能と学習の科学)は、AIシステムを作るために必要となる基礎的な科学的原理・一般的な工学的手法・アルゴリズムを研究開発するプログラムである。ここでいう「オープンワールドの新規性(open-world novelty)」とは、AIが訓練(学習)時には見ていなかった、予期せぬ状況やルールの変化を指す。多くのAIは学習したデータの分布の中では高い性能を示す一方、その外側の未知の事態では急に当てにならなくなる――この弱点に正面から取り組むのがSAIL-ONの狙いだといえる。
なぜ重要か。実運用のAIは、学習時の前提が崩れる場面(環境の変化・想定外の入力・相手の新しい振る舞い)に必ず直面する。そうした新規性をAI自身が検知し、性能を保ったまま適応できるかは、自動運転から防衛システムまで信頼性を左右する根本問題である。製品を買う調達ではなく、その土台となる「AIの科学」そのものを国費で育てようとする点に、この種の基礎研究契約の意味がある。なお本件の技術的な中身や成果は原文に記載がないため、ここでは踏み込まない。
横断的に見れば、これは米国が先端AIの源流を担う研究投資の一例である。SAIL-ONのような基礎研究は、単一の製品ではなく、後年の多くの応用(頑健性・分布外検知・継続学習など)の共通基盤になりうる。受注者は応用研究を長く手がけてきた技術系企業であり、こうした企業・研究機関が国の研究プログラムの実行主体となる構図そのものが、米国の研究エコシステムの特徴を映している。
なぜ重要か
AIの「未知の状況への適応(頑健性・汎化)」という根本課題に国費を投じる事例。AIの頑健性・分布外検知・継続学習の動向を追う読者にとって、米国の先端AI研究投資がどこに向かっているかを読む手がかりになる。
よくある質問(FAQ)
「オープンワールドの新規性」とは何ですか?
この契約で具体的に何が作られたのですか?
出典(一次情報)
本記事は下記の米国政府公式の支出データに基づく独自整理です。正確・最新の内容は公式をご確認ください。
- USAspending(契約の詳細)
- 契約番号(PIID):HR001120C0022